富田浩司は大学で油彩画を学んだ後、長く美術教育に携りながら絵と言葉による平面作品を創作してきました。10年程前からは、自宅近くの天龍川河口や河川敷を歩き、そこで見つけたものを素材にした造形作品に取り組んできました。今回は、長方形の板材に様々な材質の漂着物を組み合わせた“ミクストメディア(混合素材)”と呼ばれる手法による連作(新作)を発表します。仏教的な観念と向き合いながら続ける制作は、さながら修行僧のようでもあります。
村上誠は昨年、静岡県立美術館での『天地耕作-初源への道行き』展で話題になった美術プロジェクトの中心メンバーですが、10代に自力で写真技術を体得した写真家でもあります。今回展示する写真は、天龍川の両岸を河口から水源地(諏訪湖)までを歩いて遡上するプロジェクトの中間報告です。
富田と村上は28年前に出会い、同じ教育機関で美術教育に携わってきました。しかし、ふたりはこれまで一度も同じ空間で作品を発表したことはなく、今回がその最初の試みとなります。それぞれの作品を異なるの空間(1階と2階)に並べることで、ふたりに共通する芸術への強い想いが階を隔てて共振する、と同時に、それぞれの個性が静かに反発し合う不思議な空間が創出されました。