CAVE(ケイブ)の前世は工場(ファクトリー)である。浜松は明治以来の繊維産業、そして楽器、輸送機器、光技術と、その産業はこの地に活力を生み出してきた。しかし産業は「その時」と共にあって、残らない。人が残し継承することができるのは「感情生活の記憶」であろう。実利の役割を終えたものを送り、悪霊を和らげ、ねじれを戻して、記憶の蘇生をはかっていくことにかかわること、それを芸(簡単にアートと言おう)と呼びたい。
ここ助信の、とある機器製造工場であった、くずと油にまみれていた300平方メートルの空間は、2年をかけて回復し、柱の無い1つの場として甦った。室内に点在する曲面とオブジェは、この改修を手がけたインテリア・アーティストであるディヴィッド・ホワイトの作である。
ケイブは何をやろうとしているのか。CAVEとは「耕すことを、芸を、見えることで、人や物たちとの出会いを」希求する。
ケイブでは、造形アートや身体アートの、制作工房であると同時に、展示・公演空間としても機能する場として、それは異なる文化背景や分野を受容する、人々の出会える場でもある。
ケイブは「現代美術」というモダニズムの言説を払拭する。時間や進展は一方向の線形ではなくて、併進・交差したり行きつ戻りつつワープする認識を認める。「ところ」と「かたち」は多様であり、「新しい」も「古い」も、「芸術」も「芸能」も、入れ替え可能で、同じまなざしで見ようとする。
ケイブは、芸の多文化を尊重する。世界は此岸も彼岸も含むものである。浜松が取りもった外国人の参加や、その縁で日本のアーティストが外国で交流・活躍することを望む。
ケイブは希望をもっている。